2008年 138回 天皇賞(秋)結果
着 | 馬 | 騎手 |
---|---|---|
1 | ウオッカ | 武豊 |
2 | ダイワスカーレット | 安藤勝己 |
3 | ディープスカイ | 四位洋文 |
女性はいつの時代も強くたくましいものだけど、スポーツの世界においては男性との間に埋めがたい肉体の差があるのも事実。
それは競馬も例外ではなく、牝馬といえばその競争能力において牡馬と大きな差があるのが常だったわ。
『第138回天皇賞(秋)』 よ。
一方のダイワスカーレットにはウオッカのような華やかさこそなかったの。
だけどここまで連対率100%という安定した成績を誇り、また3歳時にはウオッカとの対決で3勝を挙げている、れっきとした実力馬だったわ。
この年の天皇賞は、2頭が古馬になってから初めて激突するレースとして注目を集めたの。
2008年11月2日の東京競馬場で、まさにその答えが出ようとしていたわ。
ダイワスカーレットは長期の休み明けというハンデを抱えながらも、この年のダービーを制した牡馬ディープスカイを抑えての2番人気となったわ。
女の熱い戦いが幕を開けたの。
走りたがる気性そのままにレースの主導権を握る、いつものスタイルだったの。
このときウオッカは、かねてより最強牝馬の座を争い続けたライバルとの再戦に興奮してか、わずかに行きたがるところを見せていたわ。
鞍上の武豊は、女王のプライドを刺激しないよう細心の注意を払いながら、そのペースを抑えていたわ。
気づけば1000m通過タイムは58.7のハイペース、息を抜くところのないレース展開となったの。
4コーナーを回りながら身体を外に持ち出し、馬なりで進出を開始したわ。
ダイワスカーレットは依然として先頭に立ち、鞍上の安藤勝己が仕掛けるのを待ち構えていたの。
後方でのたたき合いを制したウオッカは、残り200mでついにダイワスカーレットを差して先頭に立ったわ。
だけど、ダイワスカーレットの粘りは凄まじいものがあったわ。
『私はウオッカには負けない』
まるでそう言わんばかりの走り。
G1という最高峰のレースをハイペースで引っ張り、脚を使い続けたてきた影の実力馬は、ほとんど意地だけを原動力にウオッカを追い続けたわ。
『ダイワスカーレットには負けない』
そんな思いが伝わってくるような、気迫に満ちた走りでゴールを目指したわ。
目で見る限り、どちらが先着したかは全く判別できなかったのよ。
「同着でもいいんじゃないのか」
ファンからはそんな声も挙がったわ。
だけど、果たしてウオッカやダイワスカーレットは、そのような決着を望んだのかしら。
人々が固唾を飲んで掲示板を見守ること十数分、ついに着順が確定し、
その着差はわずか2cmだったの。
2頭の名牝の直接対決は、これが最後の機会となったわ。
ウオッカはその後の競走馬生活で歴代牝馬最多のG1レース7勝を挙げ、ダイワスカーレットもまた歴代牝馬最多となる生涯12戦12連対という記録を達成したの。