2005年 50回 有馬記念結果
着 | 馬 | 騎手 |
---|---|---|
1 | ハーツクライ | C.ルメール |
2 | ディープインパクト | 武豊 |
3 | リンカーン | 横山典弘 |
2005年と言えば、日本競馬界の歴史に新たな金字塔が打ち立てられた年だったわ。
当時3歳のディープインパクトが無敗での3冠を達成したのよ。
まさに2005年の頂点に上り詰めた絶対王者が、その年の締めくくり、無敗での4冠達成の舞台に選んだのは
だったわ。
事前のファン投票でも、当然のように1位を獲得していたわ。
“ディープインパクトの、ディープインパクトによる、ディープインパクトのためのレース”だったのよ。
更に前年の菊花賞馬デルタブルースや、ジャパンカップでレコード決着を演じたハーツクライらが名を連ねたわ。
その他にも、タップダンスシチーにスズカマンボなど、多彩なメンバーが参戦を表明していたわ。
これら歴戦の古馬を相手に、ディープインパクトがどのような戦いを見せるのかに注目が集まっていたのよ。
当日ディープインパクトの走りを一目見ようと、中山競馬場に詰めかけたファンの数は16万人に及んだわ。
各スポーツ紙、競馬専門誌もディープインパクト一色。
まさに日本中が、ディープインパクトによる大記録誕生の瞬間を待ちわびていたわね。
この日の有馬記念に限らず、ディープインパクトの出るレースでは単勝がよく売れ、払戻金の倍率は常に1倍台の前半となったわ。
英雄の走りを見に来た大量のファンが、その記念にと単勝馬券を購入するのよ。
1番人気:ディープインパクト(1.3倍)
2番人気:ゼンノロブロイ(6.8倍)
3番人気:デルタブルース(11.5倍)
4番人気:ハーツクライ(17.1倍)
となっていたわ。
ディープインパクトとその他の馬との人気の差は圧倒的だったわね。
「競馬に絶対はないが、今年のディープインパクトは絶対に勝つ」
スタンドはそんな空気に支配されていたのよ。
ここまで無敗を保ち続けた王者の、いつもと変わらぬ走りだったのよ。
そこから3馬身後ろのオースミハルカを追う三番手集団では、その時ある異変が起きていたわ。
だけど、その違和感は絶対王者への声援にほとんどかき消されていたわ。
更に後ろでは、サンライズペガサスとビッグゴールド、続けてヘヴンリーロマンスとデルタブルースの4頭が集団を形成したわ。
後ろから2頭目の位置にグラスボンバー、最後尾にスズカマンボと言った隊列でレースは流れていったわ。
その後も淡々と12秒台のラップが並び、脚の休まらないタフなレース展開となったわね。
静かな緊張感を保ったまま馬郡は向こう正面を過ぎ、そのまま3コーナーに差し掛かったわ。
勝負が動き始めたの。
ディープインパクトは馬なりに外を走り、じわり、じわりと順位を伸ばしたの。
いつも通りの完璧な手応えに見えたわ。
そのまま直線で飛ぶように先行集団を抜き去り、先頭でゴール板を通過する姿を誰もが想像したわね。
ディープインパクトの伸び脚が明らかに鈍かったのよ。
16万人がその目を疑う中、前方には英雄を尻目にするするとゴールに向かう馬がいたの。
これまでハーツクライの持ち味といえば、圧倒的な終いの脚だったわ。
前走のジャパンカップでも上がり34.4の末脚を見せ、レコード決着のアルカセットとハナ差の2着だったの。
そんなハーツクライを、フランス人騎手のクリストフ・ルメールはあえて先行させていたのよ。
その更に後ろにつけることを避けたルメールの妙手だったわ。
ハーツクライがゴール板を横切り、悲願のG1を勝ち取ったそのとき、スタンドを揺らしたのは歓声ではなく悲鳴だったの。
その後同じくG1初制覇を果たし、鞍上で大きく腕を振り上げたルメールを、会場は異様な沈黙で迎えたわ。
ディープインパクトが負けるなど、誰も想像していなかったのよ。
競馬に絶対は無いけれど、この馬にだけは絶対があると思っていたわ。
その王者に、この日初めて土がついたのよ。
それは、英雄ディープインパクトを以ってしても越えることはできなかったわ。
『競馬に絶対はない』
ということをね。