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無敗のディープインパクトが敗北した有馬記念は衝撃的でした

最強馬・無敗の馬であっても競馬に絶対はない、だからこそ面白い
目次

2005年 50回 有馬記念結果

騎手
1 ハーツクライ C.ルメール
2 ディープインパクト 武豊
3 リンカーン 横山典弘

 

2005年と言えば、日本競馬界の歴史に新たな金字塔が打ち立てられた年だったわ。
当時3歳のディープインパクトが無敗での3冠を達成したのよ。

 

1984年のシンボリルドルフ以来、実に21年ぶりの快挙を成し遂げたディープインパクト。
まさに2005年の頂点に上り詰めた絶対王者が、その年の締めくくり、無敗での4冠達成の舞台に選んだのは

 

『第50回有馬記念』
だったわ。

 

この時、ディープインパクトの人気はもはや旧来の競馬ファンの枠を越え、広く世間を巻き込んだ競馬ブームを起こしていたの。
事前のファン投票でも、当然のように1位を獲得していたわ。

 

そんな中行われたこの有馬記念は、いわば
“ディープインパクトの、ディープインパクトによる、ディープインパクトのためのレース”だったのよ。

 

迎え撃つ古馬勢の筆頭は、前年に秋古馬3冠を達成したゼンノロブロイ。
更に前年の菊花賞馬デルタブルースや、ジャパンカップでレコード決着を演じたハーツクライらが名を連ねたわ。 

その他にも、タップダンスシチーにスズカマンボなど、多彩なメンバーが参戦を表明していたわ。
これら歴戦の古馬を相手に、ディープインパクトがどのような戦いを見せるのかに注目が集まっていたのよ。

 

そして、2005年12月25日。
当日ディープインパクトの走りを一目見ようと、中山競馬場に詰めかけたファンの数は16万人に及んだわ。

 

中山競馬場はもはやディープインパクト一色。
各スポーツ紙、競馬専門誌もディープインパクト一色。
まさに日本中が、ディープインパクトによる大記録誕生の瞬間を待ちわびていたわね。

 

ファンの期待の高さは単勝オッズにも表れていたわ。
この日の有馬記念に限らず、ディープインパクトの出るレースでは単勝がよく売れ、払戻金の倍率は常に1倍台の前半となったわ。
英雄の走りを見に来た大量のファンが、その記念にと単勝馬券を購入するのよ。

 

この日、上位人気の4頭の単勝オッズは、
1番人気:ディープインパクト(1.3倍)
2番人気:ゼンノロブロイ(6.8倍)
3番人気:デルタブルース(11.5倍)
4番人気:ハーツクライ(17.1倍)
となっていたわ。 

ディープインパクトとその他の馬との人気の差は圧倒的だったわね。

 

数字に表れる通り、この日誰もが、ディープインパクトの勝利は必然だと思っていたわ。 

「競馬に絶対はないが、今年のディープインパクトは絶対に勝つ」
スタンドはそんな空気に支配されていたのよ。

 

中山競馬場にG1のファンファーレが鳴り響き、ついに出走時刻の15:25がやってきたわ。

 

ゲートが開くと、ディープインパクトはいつも通りゆっくりと出て最後方につけたわ。
ここまで無敗を保ち続けた王者の、いつもと変わらぬ走りだったのよ。

 

ハナを争ったのはタップダンスシチーとオースミハルカ。

 

最初のメインスタンド前では、タップダンスシチーが抜け出してレースを作ったわ。 

そこから3馬身後ろのオースミハルカを追う三番手集団では、その時ある異変が起きていたわ。
だけど、その違和感は絶対王者への声援にほとんどかき消されていたわ。

 

三番手集団の先頭はハーツクライ。 その後ろにはマイソールサウンドがつけ、オペラシチー、コスモバルクが続いたわ。

 

ゼンノロブロイがその2馬身後方、全体から見て中団やや前目の位置で、その外にコイントスとリンカーンが並んだの。
更に後ろでは、サンライズペガサスとビッグゴールド、続けてヘヴンリーロマンスとデルタブルースの4頭が集団を形成したわ。

 

ディープインパクトはそこから1馬身後方。
後ろから2頭目の位置にグラスボンバー、最後尾にスズカマンボと言った隊列でレースは流れていったわ。

 

タップダンスシチーが作り出したペースは1000m通過が61.5。
その後も淡々と12秒台のラップが並び、脚の休まらないタフなレース展開となったわね。 

静かな緊張感を保ったまま馬郡は向こう正面を過ぎ、そのまま3コーナーに差し掛かったわ。
勝負が動き始めたの。

 

第3コーナー過ぎ、武豊の騎乗するディープインパクトが追い上げを開始したわ。
ディープインパクトは馬なりに外を走り、じわり、じわりと順位を伸ばしたの。 

いつも通りの完璧な手応えに見えたわ。
そのまま直線で飛ぶように先行集団を抜き去り、先頭でゴール板を通過する姿を誰もが想像したわね。

 

だけど、レースは思わぬ展開を迎えたわ。
ディープインパクトの伸び脚が明らかに鈍かったのよ。

 

これまでのレースで見せていた鋭く、一瞬で他馬を飲み込むような脚とは明らかに様子が異なっていたわ。
16万人がその目を疑う中、前方には英雄を尻目にするするとゴールに向かう馬がいたの。

 

終始3・4番手でレースをしていたハーツクライよ。
これまでハーツクライの持ち味といえば、圧倒的な終いの脚だったわ。 

前走のジャパンカップでも上がり34.4の末脚を見せ、レコード決着のアルカセットとハナ差の2着だったの。
そんなハーツクライを、フランス人騎手のクリストフ・ルメールはあえて先行させていたのよ。

 

この日相対する絶対王者は、これまでのハーツクライと同じ追い込み脚質。
その更に後ろにつけることを避けたルメールの妙手だったわ。

 

ディープインパクトも坂を登って猛追してきたけど、先にゴールしたのはそれを半馬身差かわしたハーツクライだったわ。

 

G1での勝利を知らなかったハーツクライが敗北を知らなかったディープインパクトを下し、とうとうG1を手にしたのよ。

 

だけど、競馬場内はハーツクライの勝利を祝う空気ではなかったわ。 

ハーツクライがゴール板を横切り、悲願のG1を勝ち取ったそのとき、スタンドを揺らしたのは歓声ではなく悲鳴だったの。
その後同じくG1初制覇を果たし、鞍上で大きく腕を振り上げたルメールを、会場は異様な沈黙で迎えたわ。

 

「ディープインパクトが負けた・・・」

 

ファンたちは皆、英雄の敗北を受け止められず、その場に泣き崩れる者さえいたわ。
ディープインパクトが負けるなど、誰も想像していなかったのよ。 

競馬に絶対は無いけれど、この馬にだけは絶対があると思っていたわ。
その王者に、この日初めて土がついたのよ。

 

21年前のシンボリルドルフも越えられなかった、無敗4冠の壁。
それは、英雄ディープインパクトを以ってしても越えることはできなかったわ。

 

この年の有馬記念は、我々に大事なことを思い出させてくれたわ。
『競馬に絶対はない』
ということをね。 

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