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キズナは武豊に5度目のダービー制覇と凱旋門賞4着をもたらしました

結果が出し切れずもがいていた武豊をもう一度復活させた馬です
目次

キズナの基本情報

馬名 キズナ
生年月日 2010年3月5日
ディープインパクト
キャットクイル
戦績 14戦7勝
主な勝ち鞍 ’13日本ダービー(G1)
調教師 佐々木晶三
騎手 武豊
馬主 前田晋二
生産者 ノースヒルズマネジメント

 

姉は1998年桜花賞と秋華賞を制したファレノプシス。

 

そして、そのファレノプシスの弟が競走馬になるために牧場で生活をしているときに日本全体を不幸が襲ったわ。

 

2011年3月11日に東北地方を中心に地震が発生し、甚大な被害に見舞われたの。

 

その翌年にデビューを迎える馬の中の一頭に「競馬と人の絆」という意味を込められて名付けられた馬がいたわ。

 

その馬こそ2013年、苦悩する天才武豊に復活のダービー勝利をもたらした馬。

 

そう。

 

『キズナ』よ。

 

キズナと武豊。この出会いは悲運が生んだ偶然だけど、どことなく必然のようにさえ感じてしまう縁だったわ。

 

元々、キズナには佐藤哲三が乗っていたの。ノースヒルズ・佐々木晶三・佐藤哲三。

 

この3人は非常に固い絆で結ばれていたわ。

 

その佐藤哲三が、2012年に京都競馬場で落馬による大事故に見舞われたの。

 

正に生きているのが奇跡と呼ぶに相応しいほどの大事故だったわ。

 

その佐藤哲三に変わって白羽の矢が立ったのが、ここ数年もがき苦しんでいた天才武豊だったのよ。

 

ここまで2戦2勝で迎えた3戦目。第29回ラジオNIKKEI杯2歳ステークス。

 

武豊が初騎乗と少頭数という事もありスタート後2番手での早めの競馬をしていったわ。

 

その後ろにライバルのエピファネイアがいたの。

 

前半の1000mは66秒の超が付くほどのスローペース。

 

直線を武豊は向き追い出しを開始したけど、思いのほか伸びる事が出来なかったわ。

 

エピファネイアに1馬身差を付けられ、逃げたバットボーイも差すことが出来ずに3着だったの。

 

この敗戦を機に武豊はキズナとの信頼を深めて行くのよ。

 

そして、たった1戦でキズナと言う馬のポテンシャルを見抜き頂点へと駆け抜けていくことになるのね。

 

皐月賞を目指してキズナは、皐月賞トライアルの弥生賞に駒を進めてきたわ。ここには、暮れのラジオNIKKEI杯で敗れたエピファネイア、朝日杯で1番人気だったコディーノなど、 この先もライバルと目されるであろう馬たちも出走をしてきており力を試すには絶好の機会だったわ。

 

前走は、前目で競馬をしたキズナだけどこのレースでは後方からレースを進めていったわ。

 

4コーナー前から徐々に進出を初め、いざ追い出しを開始すると前に進路がなかったの。

 

最後は伸びては来たけど、脚を余して5着。

 

これにより、陣営は目標を皐月賞からダービーにすぐ切り替え、そこから逆算してローテーションを組みなおしたわ。

 

その仕切り直しの1戦となったのは、3月に阪神で行われる毎日杯よ。断然人気で迎えたキズナは、ここでも後方からレースを進めて行ったの。

 

直線を向いてもまだ後方にいたキズナ。

 

だけど、武豊は慌てる事は全くなかったわ。

 

武豊とキズナの間ある絆が垣間見れた瞬間だったの。

 

ラスト3ハロンは34.3の末脚を駆使し初重賞勝利。

 

これで、ダービーに一歩近づいたわ。

 

毎日杯からダービーへは間隔が開いてしまうので、京都新聞杯を挟んでダービーに向かう事が決まったわ。いつも通り後方からレースを進めて行ったの。

 

3コーナー過ぎの坂の下りからゆっくり進んでいくが、前とはまだ差はあったわ。

 

そして、直線を向いてゴーサインが出ると前走同様にキズナは弾けたのよ。

 

最後は流す余裕もあっての勝利。

 

ここ2戦は文句なしの競馬。

 

後は、次走の本番でもキズナの力を最大限に発揮させる事だけだったわ。

 

2013年5月26日第80回日本ダービー。80回目の記念レースとして施行されたこの年のダービー。

 

14万の人が駆け付ける程の盛り上がりを見せていたわ。

 

皐月賞で好走した馬を差し置いてキズナは1番人気の支持を受けてゲートインが始まったの。

 

15:40分。運命のゲートが開いたわ。

 

1番枠から出たキズナはそのまま後方に下げ、いつものポジションから進めていったの。人気のロゴタイプは4番手、エピファネイアは中団からレースを進めていったわ。

 

ここ出ている18頭全ての馬に携わる人の思いがこのレースには託されていたのよ。

 

もちろんキズナもその一頭ね。

 

落馬事故により長期の休養を余儀なくされている佐藤哲三の為にも、是が非でも勝ちたいレースだったのね。武豊にとってももちろん勝ちたいレースだったでしょう。

 

道中リズムよく進んでいたキズナと武豊。大欅を過ぎ、少しづつ進んでいったわ。

 

そして運命の525mの直線に差し掛かったの。

 

先に皐月賞馬ロゴタイプが抜け、その後を追うようにエピファネイアも馬群を割って伸びてきたわ。その頃、キズナは大外に持ち出していたけど、一瞬だけ挟まれるところがあったの。

 

坂を上って残り200mを切ったその時だったわ。

 

先に抜けたエピファネイアを目掛けて、赤と青の勝負服が迫ってきたの。

 

残り100m地点ではまだエピファネイアが先頭。それを1完歩づつ差を詰めるキズナ。

 

残り50mを切った時、エピファネイアとキズナの順序が変わったわ。

 

キズナがエピファネイアを半馬身捕まえたところがゴールだったわ。キズナに関わった全ての人の思いが結ばれた瞬間だったわね。

 

“武豊ダービー5勝目”計らずも競馬場内からは武豊とキズナを祝福する拍手が鳴りやまなかったわ。

 

天才の復活こそ競馬ファンが待っていた光景だったのよ。

 

ダービーに勝ったのは、奇しくもキズナの父ディープインパクトが勝った2005年以来だったわ。

 

史上初の同じ騎手による親子ダービー制覇となったの。

 

武豊はインタビューの最後をこう締めくくったわ。

 

『僕は帰ってきました』

 

この一言に全てが集約されているようだったわね。

 

第80代ダービー馬となったキズナは秋に凱旋門賞挑戦が発表されたわ。ダービー馬がその年に凱旋門賞に向かうのは初の試みで、オルフェーヴルと併せて悲願が期待されていたの。

 

凱旋門賞と同じ舞台で行われるニエル賞にキズナは出走したわ。海外に来てもそのスタイルが変わる事はなかったのよ。

 

後方2番手から進んでいき、最後の直線で馬なりでポジションを上げて行き残り300mから追い出し開始。

 

最後はイギリスダービー馬のルーラーオブザワールドに詰め寄られるがハナ差制し勝利。

 

日英ダービー馬対決は日本に軍配が上がったわ。

 

2013年10月6日第92回凱旋門賞がフランスロンシャン競馬場で行われたの。人気は、昨年2着のオルフェーヴルが堂々の1番人気。

 

キズナは前走の勝ち方が評価され3番人気での出走となったわ。

 

ここでもポジションは後方から進めていったの。フォルスストレートから最後の直線に掛かるところで上がっていき、武豊はオルフェーヴルに蓋をしたわ。

 

ここに武豊の本気を見たわね。

 

武豊が必死に追い伸びてはいるけど、勝ったトレヴから遅れて4着でのゴール。結果は残念ではあったけど、悲観するものではなかったわ。

 

翌年に再び凱旋門賞を目指すべく休養に入ったわ。そして、休み明けは大阪杯に決まったの。

 

キズナとエピファネイアの一騎打ちムードの中、キズナは2番人気での出走となったわ。ダービー馬のプライドが傷つけられた瞬間だったわね。

 

だけど、レースではさらにパワーアップしたパフォーマンスを見せ楽々と勝利を収めたわ。そして、天皇賞(春)に出走したけれど結果は4着。

 

レース後、骨折か判明し長い休養が必要になったわ。

 

そして、オーナーから2015年一杯を持って引退が発表されたのよ。

 

引き寄せられるべくして引き寄せられたキズナと武豊。その間には、生死を彷徨うほどの重症を負った佐藤哲三もいるわ。

 

1頭の馬と二人の騎手の絆は計り知れないほど太く強固なものになっていたのね。

 

今年、その絆がフランスで日本に歓喜をもたらすことも願わずにはいられないわ。

 

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