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ハイセイコーがアイドルホースとして飛躍を遂げた皐月賞

地方の怪物は日本中に愛されるスーパースターホースへと変貌を遂げた

1973年 33回 皐月賞結果
着 馬 騎手
1 ハイセイコー 増沢末夫
2 カネイコマ 蛯沢誠治
3 ホウシユウエイト 野平祐二

1970年代といえば、名馬ハイセイコーが一世を風靡していた頃よ。

1972年に大井競馬場でデビューして以来、圧倒的な実力により連戦連勝を挙げ、中央競馬に移籍を果たした「地方の怪物」。

そのハイセイコーが、初めてG1に挑むレースとして話題を集めたのが『第33回 皐月賞』だったわ。

この時すでに競馬ファンの間で高い人気を誇っていたハイセイコーだけど、専門家の間ではその実力を不安視する声も大きかったわ。

2走前の弥生賞や、前走のスプリングステークスではいずれも勝ちこそしたものの、そのレース内容は「怪物」の異名にふさわしくないギリギリの勝利。

どちらのレースでも地方競馬時代の末脚やスピードは見る影もなく、レース中に騎手の指示に従おうとしないハミ受けの悪さも目立ってきていたの。

 

そんなハイセイコーが、中央競馬のG1で通用するのか?

皐月賞はこのスター候補生にとって、一つの試金石だったわ。

 

1973年4月15日。

中山競馬場の天候は雨、馬場状態は重、スタンドには傘が開いていたわ。

ハイセイコーにとっては重馬場を走る初めてのレースとなり、陣営としてはさらなる不安材料が増えた格好だったの。
しかしファンからの期待には変わりなく、当日は単勝2.0倍の1番人気。

毎日杯勝者のホウシュウエイトなどを抑えての圧倒的な支持だったわ。

胸中複雑な関係者たちとは裏腹に、スタンドはもはやハイセイコー一色となっていたのよ。

そして出走時刻。
ファンの期待と、陣営の願いを背負ってゲートが開いたわ。

好スタートを切ったハイセイコーは、16頭立ての7番手からレースを進めていったわ。

陣営の努力が実り、レース中のハミ受けは良好。
向こう正面を過ぎても状態はよく、これまで通りの地面を掻き込むような走法が、ぬかるんだ馬場をよく捉えていたわ。

 

中盤、少し行きたがったところをそのまま促され、第三コーナーで早くも先頭に立ったハイセイコー。

地方競馬時代のようにそのまま着差を広げて快勝するかと思われたけど、第四コーナーでアクシデントに襲われたわ。
カーブを曲がり切れず、外に膨れてしまったのよ。

これによりハイセイコーは一時2番手に後退したわ。
だけど、彼はここでついに「地方の怪物」としての本領を発揮するのよ。

中央に移籍してから長らく封じていた鋭い末脚を見せ、先頭のイチフジイサミをあっという間に差し返したの。

ハイセイコーはその後もぐんぐんと伸び続け、最終的に2着と2馬身以上の差をつけて1位でゴールを通過したわ。

スター候補生だった地方の怪物が、ついに本物のスターになった瞬間だったわ。

折しもこの頃、世間では新潟生まれの庶民派・田中角栄が名だたる重鎮を押しのけて内閣総理大臣に就任し、話題を集めていたの。

彼と同じように、地方競馬出身ながら中央のエリートを倒してクラシックを勝ち取った地方の怪物。
その姿は人々の心を打ち、ハイセイコーは社会現象となるほどの大ブームを巻き起こしたわ。

馬も人も、家柄や育ちなど関係なく、努力すれば必ず報われる。
ハイセイコーの姿を見て、そう勇気づけられたファンも多かったわね。

1973年4月15日。
この日ハイセイコーは子供から大人まで、すべての日本人に夢を与えるスターホースに上り詰めたのよ。

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